坂井紅介/Benisuke Sakai
2015年04月
偲ぶ会  (2015.04.25[Sat])

今日は長嶺高文監督を偲ぶ会でした。


私が音楽を担当した映画、
「喜談南海變化玉」を37年ぶりに観ました。



去年から、近い人達が逝っています。
みんな素敵な生き様だったので、
これから先も生き方を指導してくれる気がします。
それぞれの人が、縁を広げてくれたり深めてくれたり、
人生を面白くしてくれています。


うまく言えませんが、
縁の中に人は存在し続ける気がします。
もちろん自分も縁の中に生かされているような。
うまく言えませんが。


ありがとう。
手を合わせると、
感謝の気持ちでいっぱいです。




レソラ  (2015.04.20[Mon])

井上淑彦「fuse」は、
毎年正月に横浜「ドルフィ」で3デイズをやるのを恒例にしていました。
井上さんは、その日に向けて新曲を数曲作り披露していました。


今年は、井上さんが治療に専念し、欠席することを決めたので、
fuseの残りの3人が中心となり、
応援ゲストに加わっていただき、
3日間、井上曲を演奏しました。


その時に演奏した「レソラ」、
この曲は、3デイズにあたって井上さんから各演奏者に出された課題なんです。



私からの提案なんですがー


井上淑彦ファンで、
作曲をするかた、
あなたも作ってみますか?


井上さんから僕らに送られたメールです。
去年のクリスマスに届きました。


「Merry X'mas!」 (2014.12/25)
『来年1月の3days@Dolphyにご出演の皆様、
ご出演ありがとうございます。
いきなりではありますが、
ひとつお願いがあります。
3日間それぞれ同じ課題を基に
曲を作って演奏して欲しいのです。
私から提示する課題は、
ごくシンプルなもので
『レ、ソ、ラ』の3音を素材とした曲を作って下さい。
『レ、ソ、ラ』は上昇の形をとり『ラ、ソ、レ』『レ、ラ、ソ』『ソ、レ、ラ』などの形をとらないように、
『レ、ソ、ラ』は曲の冒頭・キッカケ・動機に少なくとも一回、
若しくはそれ以上使って下さい。
あとはレとソとラをどう入れ替えても他の音を足しても、
また全く違った音列やメロディーを作っても自由です。
( 全くその場での即興演奏でも構いません )。』



3デイズは、
各「レソラ」も感心な出来でした!
後日、ライブの録音を聞いた井上さんから、
「レソラもやってよかった」とメールをもらいました。
そして、
どうやら、井上さんも「レソラ」を作っていたようです。
新曲も!?



井上さんは、たくさんの名曲を残しています。


ピアノの野力奏一さんは、
井上さんと「Fire Works」を演奏したことがあるそうで、
私とのデュオの時に「この曲やりたい」と言って、
譜面を持ってきてくれました。
嬉しかったー!


きっと、たくさんのミュージシャンが井上曲を演奏しているのでしょうね。
私も、これからも演奏していきます。


不滅ですね。



1/13の日記に書きましたが、
fuse、Zephy、Clepsydra、
井上さんの曲を演奏する3バンドが一同に会する、
井上さんも吹くはずだった「夢の饗宴」、
絶対にやりますからね!



井上さんの存在は大きいです。
井上さんの曲を演奏していると、
僕らには井上さんのサックスの音が、いないのに聞こえる瞬間があります。


合同バンド、
その前にfusですね。
井上曲がまた新たな展開や色彩を見せるでしょう。
ワクワクします。
僕らは、またそこで井上さんに会えます。




井上淑彦さん  (2015.04.02[Thu])

井上さんの葬儀が終わりました。



昨年10月の癌公表以来、
スケジュールなどで、井上さんに代わり、
いくつか連絡係をすることがありました。


皆様のご厚情に感謝申し上げます。


まだやることがあり、
そのおかげで、ふり返らずにいられるかもしれません。


それに、井上さんは、治療中も前向きでしたから。



そのことを知る人間として、
日記に書いておいた方がいいのかなー、と思い始めました。



今日は、
「復帰目指し治療に前向きな井上さん」です。



・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー



「現時点で先のことは解りませんが、
復帰に向け治療頑張りたいと思います。 淑」



のり子さん(奥様)の言葉を借りれば、
「毎日、しっかり治療に向き合い、
模範的な患者であるような気がします!」


「皆様の想いを頂き一層頑張れる私達です。」


「毎日頑張る井上は逞しいです。」



井上さんは声が出にくくなっていたため、
(その状態でも昨年10/22の活動停止ライブでサックスの音は出ていたから不思議。
井上さんは、
「言葉をしゃべるのとサックスを吹くのは、使う筋肉が違うんだよ」
と言っていました。)
僕らはメールで用件をやり取りしていました。
おかげで言葉が残っています。
元カレのメールを公開する反則行為ような、
後ろめたさと照れはありますが、
たぶん許してくれるでしょう。




「周りは私たち夫婦が落ち込んでいるのではないかと、(略)
でも私ものり子も実は驚くほど楽観的です。」


「必然とも言えるラッキーが重なっています。」


「3days面白そうだなぁ!」


「12/3すごく嬉しいです。
と同時に責任を感じています。
(略)
私の皮算用では9月からぼちぼち活動でしょうか。
前もってライブはした方がいいです。
少なくとも一回は10〜11月に、
それで問題があるようなら11月後半〜終わりにリハーサルをとるとかはどうでしょう。」


「忙しいのにいつも迷惑の掛けっぱなしで本当に申し訳ありませんが
引き続きいろいろとよろしくお願いします。
春頃には自分で出来るようになれるといいのですが」


「きのうさっそく電話してくれたそうで…ありがとうございます。
さっきメールがあり、とても喜んでもらえました。
今日は雲ひとつ無い晴天だし体調もいいし、
今年の下半期のもろもろでワクワクです!
ありがとうございます\(^o^)/淑」


「もし20帰りだったらリハーサル時間に間に合うように帰ってくるのは全然平気です。」


「今日退院して今、3daysのCDを聴いていたところです。
オモシローイ。
みんなの分ももらっているので明日投函します。」


「とんでもない、気にしないでください。
私は最近ずっと微熱が続いていて、来てくれても応対できるかどうか…。
3daysの演奏やトーク面白いです。
「レソラ」もやってよかった。」



・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・



リハビリ全行程が終わったら、
サックスを吹く練習を始める予定だったそうです。


なのに、


のり子さんの言葉を借りれば、
「一番驚いているのは本人だと思います。」


精悍な顔立ちと厚い胸板。
サックスを近づけると鳴り出しそうでした。


自宅のキーボードの上には作曲途中の譜面が、
ピアノの上には未発表らしい譜面がたくさんでした。



・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・



昨年末、見舞いに行ったとき、
ナースセンターで問い合わせている私を病室から見つけて、
嬉しそうにニコニコ顔でこちらに向かって来て、
やつれた感じが無く、元気そうで、
思わず井上さんを指差して大笑い、
「全然、病人に見えないじゃん」
奥様も交えて3人で大笑い。


あとでのり子さんから、
「お帰りの後、井上が
『なんか元気出て来たなぁー!』と喜んでました。
きっと細胞の一つ一つが喜んでいたのでしょう。
そんな感じがしました。」


井上さんの優しさ、カッコよさ、音楽にふれるたびに、
僕らも喜びをもらいましたよね。


サックスもカッコイイけど、
吹かないでステージにいるだけでも絵になった。
カウンターで煙草を燻らす姿や、
音楽やアートや服や酒や肴へのこだわり。
カッコつけているのではなく絵になった。
男から見てもカッコいい男。


ストイックに律する態度も評判のようでしたが、
私には、精霊と戯れるお坊っちゃまの印象もあります。


人懐こい笑顔、
共演者が何か面白いプレイをした時に見せる、
笑いをこらえたような穏やかな笑み。



20代後半から一緒にプレイし、
しばらくお互い付かず離れず。
40代半ばに井上さんリーダーの「fuse」に誘われ、60代まで。
井上さんの、この先10年20年を、みんな聴きたかった。


去年の8月だったかな、
カウンターで2人とも酒も呑まずに話した。
「もしあの時、別の○○○を選択していたら、
井上さん、その方が幸せだったと思います?」
とたずねたら、
「いや、選択を間違えなくて本当によかったよ。」
井上さんには珍しい、即座の力強い返答。
今を感謝するあの言葉が、
私の悲しみを弱めてくれます。


葬儀に集まったミュージシャンやお花の数。
みんなが愛し、慕い、尊敬しています。


長い間、
ありがとうございました。
ずっと・・・聴こえています。




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